twnovelまとめ【震災・原発事故ネタ】

3/11の東日本大震災発生後に書いたついのべ。
最初に書いたものは「3.11 心に残る140字の物語」にも収録された。

tokoya #twnovel ナナはリフターから山頂を見下ろした。曾々祖母の家がそこにあると聞かされたのだが、表層に出ているとは限らないし、仮にあったとしても粉砕されて、やはり識別できなかっただろう。線量計のアラームが鳴り響き、ナナは花束を投下して、福島第一原発跡に造られたボタ山を後にした。

tokoya #twnovel 男は長年探していた物をついに手に入れた。これを喰えば永遠に生きられる。そう、人魚の肉だ。男は涙しながらその肉を喰らい、不老不死になった。だが、男は知らなかった、人魚の肉は放射性物質を高濃度で蓄積する事を。そして、重度の放射線障害に陥っても、決して死ねないことを。

tokoya #twnovel 原発事故が発生した時、男は準備しておいた核シェルターにいち早く逃げ込んだ。食料はたっぷり用意してあるし、水と空気は浄化再利用するから安全だ。そして十数年後。地上に戻った男が見たものは、事故当時より更に汚染された環境と、その中で暮らす耐性の付いた日本人の姿だった。

tokoya #twnovel 原発の事故停止と、猛暑によって電力危機が現実となり、計画停電でも補えなくなった。政府は最後の手段として、最も電力使用の多い時間帯に、特定の行動をとるよう国民に対し通達した。「指定の時間になったら、舌を出して右耳を引っ張って下さい、一時的な仮死状態に移行します…」

tokoya #twnovel 電力不足で会社のエアコンが使用禁止になり、汗だくで仕事。でも他の人はみんな涼しげな顔をしている。我慢強いなぁ、と思った瞬間ついに停電。同時に自分以外の全員が動きを止めた。知らなかったよ。いつのまにか他の社員が、すべて遠隔操作アンドロイドに入れ替わっていたなんて。

tokoya #twnovel 高濃度汚染水の処理用として発明家が持ち込んだ装置は、驚異的な性能を発揮した。汚染水を注入すると全く放射能を含まない水が排出されるのだ。原理を問われた男はこう答えた「実は太古の地球と水を交換しているだけなんだ。4億年ぐらい前かな?魚が進化して陸に上がった時代だよ

tokoya #twnovel 「昔は日本という国があったんだよ」と彼は孫娘に語った。「ある時震災で原発が壊れて、危険な放射性物質が漏れ出したんだ」「みんな逃げちゃった?」「いや、それでも逃げずにいて、やがてみんな死んでしまった」「よっぽど日本という国が好きだったんだね」「さあ、どうだろうね」

tokoya #twnovel 魔神を呼び出す方法を発見した俺は、その力を世の為に使おうと考えた。「この世界の放射線源を、すべて無力化してくれ」俺は呼び出した魔神にそう願った。これで原発核兵器も無意味になる。世界は混乱するだろうが、人類が滅亡するよりはマシだ。その8分後、世界は闇に包まれた

tokoya #twnovel 震災から二週間経ちましたね。現実とは思えない事が次々に起こり、大きな不安を感じていると思います。でも来年の今日には、なんであんなにも不安だったのだろう?と不思議に思うはずです。爪痕はまだ大きいですが、みんな未来を信じています。2012年3月25日の、あなたより。

tokoya #twnovel 計画停電の時間が近づくと、人々は本や碁盤やお茶菓子を持って家を出る。そして自家発電照明の集会所で、ささやかなくつろぎの時間を過ごす。そこにネットは無いが、語らいによって結ばれた人の繋がりがある。やがて停電が終わり、人々はそれぞれの家に帰る。明日の約束を交わして。